Archive for 3月 5th, 2024

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• 火曜日, 3月 05th, 2024

那佐という風景を発見すると 音と形と色の交響曲が時空を超えて流れてくる ナ サ ナサという美しい音を舌の上で何度か転がしてみると ひとつの風景が立ちあがってくる ナサ NASA 那佐という言葉の向う側に那佐というコトバの原初が見えてくる 言葉は呪術でもある 古代から この土地の人々は「波」のことを「ナ」と呼んでいた 波の騒ぐ場処 文字が伝わると 和那佐があてがわれ 後に 省略されて 那佐となった(阿波風土記)美しい入江にきれいな透明な水が流れていて そこで食べた貝(志深里)が 実に美味しかったと履仲天皇も語っている(播磨風土記)和那佐意富曽神社の誕生の地 四国は海に囲繞されているが 実は 同時に山の国でもある 剣山から石鎚山まで東西に四国山脈が走り そこから 四方八方に 無数の山や峯や連峰が点在して 海へと雪崩れ込むから 平野は少なく狭い 土佐と阿波の国境に 宍喰という町があって その町の北側に鈴ヶ峰という連峰があり その裾野は数キロにわたって なだらかに東へ延びて 太平洋へ突入する その麓に 20~30軒の集落がある 那佐だ 陸地に添って 平行に「陸繋島」が走っている 入江が那佐湾である 西側に美しい砂嘴があって 半島は 緑で蔽われた巨大な戦艦のように海に浮かんでいる 岬だ 天然の良港である
四季の 那佐湾の入江に流れる水を 1800回以上視ただろうか 通学バスに揺られて 宍喰から海南高校まで 約30分 バスは那佐湾の岸辺を走りぬけていく 行きは バスの右側に 帰りはバスの左側の窓際に立って 緑の水が千変万化する光景を眺めた 長い長い梅雨が終った初夏 入江の水は 緑の中の緑となって燃えあがった 青空の光 松の緑 ウバメガシの深い緑を映して 水面に緑の王国が出現した 緑色の革命? 緑の爆発 光と水の祭典 入我我入 一瞬が永遠であるような「一即無限」の小宇宙が那佐湾の入江に流れる緑の水に発生 水の道であろうか 緑の水がイデアになった 那佐は 正に アジールであった

※大河小説「百年の歩行」(現在、執筆中)の第二章を「散文詩」にしてみました。

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