Archive for 6月 14th, 2011

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• 火曜日, 6月 14th, 2011

1. 「『古事記』神話の謎を解く」(中公新書刊) 西條勉著
2. 「新約聖書」訳と注 ルカ福音書(作品社刊) 田川建三著
3. 「ホーキング、宇宙と人間を語る」(エクスナレッジ刊) スティーブン・ホーキング著
4. 「イエーツ詩集」(思潮社刊) 加島祥造訳
5. 「文学のプログラム」(講談社文芸文庫刊) 山城むつみ著
6. 「折口信夫文芸論集」(講談社文芸文庫刊) 折口信夫著・安藤礼二編
7. 「ハイデガー『存在と時間』の構築」(岩波現代文庫刊) 木田元著
8. 「ゲーデルの哲学」(講談社現代新書刊) 高橋昌一郎著
9. 「知性の限界」(講談社現代新書刊) 高橋昌一郎著
10. 「森の生活」上・下(岩波文庫刊) ウォールデン著
11. 「青春の門」第七部(講談社文庫刊) 五木寛之著
12. 「空海の思想的展開の研究」(株トランスビュー刊) 藤井淳著
13. 「少年殺人者考」(講談社刊) 井口時男著
14. 「自由訳般若心経」(朝日新聞出版刊) 新井満著
15. 「福島原発人災記」(現代書館刊) 川村湊著
16. 「黒い雨」(新潮文庫刊) 井伏鱒二著
17. 「三陸海岸大津波」(文春文庫刊) 吉村昭著
18. 「超高齢社会」(アドスリー刊) 坂田期雄著 ●書評 http://www.adthree.com/
19. 「賑やかな眠り」(土曜美術社出版販売刊) 詩集 宇宿一成著
20. 「十六の話」(中公文庫刊) 司馬遼太郎著
21. 「意識の形而上学」(中公文庫刊) 井筒俊彦著

3・11以後は、頭の大半が、地震・津波・原発事故に占領されているためか、読書を楽しむから、読書の果てに、究極を求めてしまう傾向が現れた。

できるだけ、必要のないものは、読まないようにしたい。作品は、作者が、どれだけ、心を深く沈めて書いているかで、だいたいの出来、不出来は決まってしまう。

「東日本大震災」についても、雑誌や単行本や特集記事を読んでいる。同じ言葉を書いていても、同じ主旨の文章を書いていても、被災者であるか、そうでないかで、言葉の意味は、まったく違ってしまう。

例えば、詩人の、和合亮一は、日経新聞にエッセイを書いていた。3・11以前の話である。日常の、(私)をめぐる、個人的な話を、緊張感のない、文章で書いていた。凡庸な詩人だと思って、評価できなかった。

ところが、3・11を体験して、同時進行で書き続けている「詩の礫」は、同じ人間の作品とは思えない、秀れた詩であった。考えて、書いているのではなく、(私)に来る言葉を、そのまま、叩きつけて、書いているのだ。人が変身したというよりも、(場)が(状況)が、和合亮一という詩人を借りて、語らせている、そんな具合である。

西條勉も、今、人間に、何が必要かを、古代の、古典を追うことで、現代を、逆に、照らし出そうとしている。私の、大学時代の友人である。

山城むつみの「ドフトエフスキー」の発想がどこから来たのか、「文学のプログラム」が教えてくれる。「古事記」「万葉集」の、中国語を使って、日本の文章を書くという行為の研究に、その発想の根があった。

井口時男の「少年殺人考」は、異様な殺人者、殺人行為に興味があって、書いたものではなく、殺人者となった少年たちの言葉、言語表現を追求していくというスリリングな一冊である。

今年から、本格的に、密教、空海に関する書物、空海の著作を読みはじめた。「空海の思想的展開の研究」は、700ページを超える大冊である。作者・藤井淳は、まだ、30代の若き研究者。力作。

古典、哲学書、宗教書、そして、宇宙に関する読書が増えている。語学の大天才、30数ヶ国語を自由に話せる(!!)井筒俊彦と司馬遼太郎の対談「十六の話」(所収)は、実に、壮快である。

井筒俊彦の最後の著作「意識の形而上学」は、哲学者、思想家の風貌が遠眺できる本である。

ホーキングの宇宙論を手にする度に、もう、人間には、宇宙そのものを、見定める術は、なくなったと思えてしまう。(ダーク・マターとは何か?)

宇宿一成の詩集「賑やかな眠り」は、声と文字が上手く入り混った、言葉そのものを生きる(詩集)であった。