Archive for 1月 15th, 2010

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• 金曜日, 1月 15th, 2010

1. 「人生の色気」(新潮社刊) 古井由吉著
2. 「西鶴の感情」(講談社文芸文庫刊) 富岡多恵子著
3. 「世界漫遊随筆抄」(講談社文芸文庫刊) 正宗白鳥著
4. 「美濃」(講談社文芸文庫刊) 小島信夫著
5. 「戦後短編小説再発見」(講談社文芸文庫刊) 小島信夫著
6. 「ブレイク詩集」(岩波文庫刊) ウイリアム・ブレイク著
7. 「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」(講談社文庫刊) 川上未映子著
8. 「イスラーム文化」(岩波文庫刊) 井筒俊彦著
9. 「意識と本質」精神的東洋を求めて(岩波文庫刊) 井筒俊彦著
10. 「日本書史」(名古屋大学出版会刊) 石川九楊著
11. 「生きて、語り伝える」(新潮社刊) Gガルシア、マルケス著
12. 「水死」(講談社刊) 大江健三郎著
13. 「ひべるにあ島紀行」(講談社文芸文庫刊) 富岡多恵子著
14. 「親鸞 上・下」(講談社刊) 五木寛之著

今年は十二分に読書を楽しめる年になりそうである。
10年に一度、出会えるか出会えないかという、大作が出版された。
石川九楊著「日本書史」である。700ページ、A4版という大冊でもあるが、もう、「本」というよりも、命を削って彫りあげた作品だ。
「書」をめぐる作品を、良寛から詩人、吉増剛造まで、論じている。普段は、「書」に関して、あまり熱心ではない私も、「『書』は文学である」という著者の声に導かれて、読みはじめている。人が、10年、20年かけた、考察は、もう、書の研究というレベルを超えて、人間とは何かという次元にまで昇華されていて、圧倒される。文学、書、漢字、その姿、形、意味、意識、思想へと直進する作者の眼は、磨ぎ澄まされて、「無」をも吸収しているのだ。

仕事とは、命懸けの作業である。衝突し、破壊し、崩れ、融合し、合体し、「書」に寄りそう真摯で温かい眼差しは、書に、人そのものを発見する。

半年、一年かけて、舐めるように、触れてみたい「本」の出現である。定価18,000円も、安いものだと思う。

井筒俊彦の「意識と本質」は、思想の深淵を歩行する、人類の知の結晶である。イスラム教を中心に、禅、仏教、そして、マラルメの「絶対言語」、芭蕉の俳句と、東洋思想から、西洋思想まで、とにかく、(知)の人、井筒俊彦の著作は、一生涯をかけた人の、歩みが、堪能できる、本格的な論考だ。

そして、何時読んでも、魂を感じさせてくれるブレイクの詩。
自由自在に時空を超えて語る、90歳を過ぎても、筆の衰えを見せなかった、「美濃」小島信夫の小説。
今回は、語れば限りがない作品ばかりだ。