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• 月曜日, 12月 20th, 2010

1. 「さらば、立松和平」(ウエイツ刊) 福島泰樹編著
2. 「兵どもが夢の先」(ウエイツ刊) 高橋公著
3. 「新約聖書」(パウロ書簡その1)訳と註(作品社刊) 田川建三訳著
4. 「新約聖書」(パウロ書簡その2)(擬似パウロ書簡)訳と註(作品社刊) 田川建三訳著
5. 「これから『正義』の話をしよう」(早川書房刊) マイケル・サンデル著
6. 「量子の社会哲学」(講談社刊) 大澤真幸著
7. 「徒然草」(岩波文庫)再読 吉田兼好著
8. 「ブッタのことば」(岩波文庫) 中村元訳
9. 「ブッタ最後の旅」(岩波文庫) 中村元訳
10. 「ブッタの真理のことば・感興のことば」(岩波文庫) 中村元訳
11. 「この人を見よ」(新潮文庫)再読 ニーチェ著
12. 「残酷人生論」(毎日新聞社刊) 池田晶子著
13. 「理性の限界」(講談社現代新書刊) 高橋昌一郎著
14. 「流跡」(新潮社刊) 朝吹真理子著

古代人の生きた言葉、考えた、信じた思想を、現代の日本人の言葉に翻訳する—いや、移植すると言った方がいいか?—「新約聖書」田川建三著を読み続ける。正確に、しかも、こなれた日本語で、美しい文章で。翻訳は、難事業であると思う。一度読み、素読の後で、考えながら読み、注釈を読む。簡単な言葉に、数百ページの注釈が要る。途轍もなく、深い、世界である。完訳が期待される。

全共闘運動の先頭に立って戦った、高橋公著「兵どもが夢の先」は、私は、かく生きたという証の書である。団塊の世代必読の書だろう。

テレビで、話題のマイケル・サンデル教授の授業を観た。対話術が、実に巧みな先生である。講師と聴集が、同じ場に立ち、同じ問題を考えて、深化させていく手法は、まるで、ブレヒト効果である。著作を買って、読んでみた。考える中心には、やはり、カントがあった。哲学の核があっての、現実問題への応用である。

「ブッタの言葉」を読んでいると、軽佻浮薄な現代人が、忘れて、見向きもしなくなった言葉が光っていて、胸が疼く。閑かに、ものを考えて、生きるということを失ってしまった人間は、もう一度、棄ててしまった(言葉)に生命を吹き込まねばなるまい。

久し振りに、若い人の小説を読む。「流跡」朝吹真理子著。なつかしい70年代の文学の香りを嗅いだ。ロブ・グリエ、ビュトールなどのヌーボーロマンの時代。フランス文学の伝統。中村真一郎、三枝和子、鈴木貞美、三砂朋子・・・。私も、早稲田文学に「投射器」を書いた。しかし、アンチ・ロマンは、日本の風土では育たなかった。文体、感性とも、申し分のない人であるが、(生きた人間)の声が含まれてくると、面白いのだが。昔の自分を見ているようで、拍手を送りたくなる。足りないのは(労働)か?

「社会学」や「社会哲学」が、何であるのか、詳しくは知らないが、「量子の」という言葉に魅かれて、大澤真幸の本を読んだ。
実は、毎月購入している「群像」で、「<世界史>の哲学」という連載があって、興奮しながら、読んでいる。その作者が、大澤真幸であった。随分とフィールドの広い人で、宗教、哲学、絵画、小説、思想、科学、音楽と、さまざまな分野を、駆け抜けながらある一点にむけて、言葉、思考が展開する、その、スリルが、実に、面白い。
(知)の破綻と(知)の共時性、その二つが、大澤の言わんとすることであろう。ニンゲンの思考は、(数)で(論理)で(存在論)で、特異点に衝突してしまっている。しかし、一人の(考える)と思われたものが、実は、異分野でも、同じようなことが起こってしまう。不思議だ。ユングの(共時性)。
「理性の限界」高橋昌一郎著。この本でも、大澤と同様に、不可能、不確実、不完全性が書かれている。

(知)が破綻しているのに、ニンゲンは、平気でセイカツをしている。(知)とは何か?(知)を語る人の(私)は、(私)自身は、どうなっているのだろう?私は、二人に、訊いてみたい。放り出された読者は、いったい、何処へ行くのか?

最後に、池田晶子の「残酷人生論」が増補、新装版で、出版された。晩年に、探求されることになる、さまざまな種子が含まれている本で、第二の処女作と呼んでも、不思議ではない「考える人」の本である。(書評欄を見て下さい)
今年も暮れた。

読書は、日々の友となった。アフォリズムは、1500本に達した。長篇小説「百年の歩行」は、現在進行中である。世界のアラカワ、荒川修作をめぐるエッセイも、来年スタートしたい。

私は、メールもパソコンも出来ない。メールで感想を送っていただいても、読むことは出来るが、返事が出来ず申し訳ありません。正に時代遅れの男である。
手紙人間であるから、手紙で、感想批判をいただけると、実にありがたい。

Category: 読書日記
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