糖尿病になって、その人がかかる医療費は、平均2000万円だと、田中先生は語る。阿波市の国保の加入者の3割が、医療機関で糖尿病の治療を受けている。医療費は毎年2億円づつ、増えているのだ。
何がなんでも、意識的な運動習慣を市民の間に根付かせないと、市の財政が、医療費で破綻してしまうだろう。本当に深刻な問題である。
さて、田中先生の「1分運動から始める糖尿病予防」の提案は、2つだった。
徳島県は阿波踊りの本場である。夏、八月には、全国から数十万人の観光客が来る。観るだけではなくて、参加して、踊る。
田中先生は「阿波踊り体操」を考案したのだ。誰にでもできる身近な踊りに、ストレッチと筋力づくりと全身運動をつけ加えて、音楽に合わせて踊るのだ。なるほど、これなら音楽に合わせて、1分間は踊れる。先生は「阿波踊り体操」を全県にひろめている。評判は上々だとか。
講義を聴いていた参加者が立ちあがると、全員が音楽に合わせて、踊りはじめたのだ。6割の人がはじめてだったが、さすがに徳島の人たちだ。眼が輝き、手足がしなやかに動き、ストップという声で、そのままのポーズで動作が止まる。ストレッチの効果だ。CDがあれば、自宅でも実行できる。
もうひとつは、10〜15cmの台を用意して、左右の足を交互に台座にのせる、ステップだった。1日100回で充分に効果がでる。
とにかく、どうにかして、今までよりも動いてもらわなければならない。今よりも動く工夫が大切だ。
①車を自転車にする
②自転車を徒歩に変える
③なるべく階段を使う
④トイレは遠い場所でする
⑤昼食はちょっと離れた店に行く
実行するのは本人だ。病気で泣くのも本人自身だ。元気な人が増えれば、地域社会も豊かになる。
幸い、阿波市には吉野川という財産がある。見事な川を眺めながら堤を歩いてみる。旧市街の町々にウオーキング・ステーションを作って、仲間づくりをして、四季折々に語らいながら歩く習慣ができれば、町と町の交流ができて、人々の会話が弾み、4つの町が、ひとつの阿波市へと結集できるのではないか、と私は考えるのだが。
一人ではできないことも、グループができて、習慣が身につけば、恵まれた環境を本当に生かすことが可能になると思う。
吉野町、土成町、市場町、阿波町をぐるりと廻ってみたが、広い田畑があり、家々にも広い庭があり、綺麗に人の手がゆきとどき、市全体は、外目には豊かな生活に見えた。
人間は動く動物だから、とにかく車社会の弊害から脱出しなければ、心身の健全な未来はない。今日からスタート、現在(いま)からスタートだ。(つづく)