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• 水曜日, 12月 08th, 2010

いよいよ日本は、超高齢者社会が、現実のものになった。いわゆる団塊の世代、700万人が、停年を過ぎた。大量の企業戦士が、会社を辞めて、それぞれの地域社会に放たれた。

人生80年時代であるから、会社、仕事を辞めても、まだ20年、約10万時間が残されている。とても、旅や趣味では、時間をもてあましてしまう。実際、(私)=(仕事)で生きていた人間がその場と役割りをなくしてしまうと、大半の人は、途方にくれるだろう。

そこで、昔の、700年の前に生きた、吉田兼好さんの言葉(本)が役に立つ。仕事を自ら棄てて、市井の自由人となった兼好さんが、人生を、どのように考えて、生きてきたか、語ってみた。

温故知新である。

人間、生きれば生きるほどに(本)が面白くなる。つまり、生きてみなければわからない内容や意味がいっぱいあるのだ。
身にしみて、わかる年齢になると、本は、毎日の友ともなるのだ。

ある日、気がつくと、(私)がいた。誰も、望んで生れてきた人はいない。そして、学習して、勉強して、(私)を生きるために(仕事)をしてきた。40年も。

それは、(社会的な私)であった。
会社、組織を離れてしまうと、また、もとの(私)に戻る。さて、この(私)をどう生きよう。

何か面白いことはないか?
何か気持ちいいことが出来ないか?

そう思って、人は、さまざまな(仕事)に就くのだ。
そのうちに、いつのまにか、(私)=(仕事)=(社会的な私)になる。
なかなか、原点にもどって(私)だけを生きるのは大変である。

私の提案は二つである。誰でも、一冊は、本を書ける。
意を決して(私)=自分について、(本)文章を書いてみることだ。(私)とは何者か?と。

もうひとつは、せっかく、この世に生れてきたのだから、人類の(知)に触れてみることである。社会に生きていると、会う人は限られている。
そこで、(歴史)の中の人に会う。
つまり、四大聖人(勝手に私が、そう呼んでいる)、孔子「論語」、釈迦(ブッダの言葉)、イエス・キリスト(新約聖書)、ソクラテス(ソクラテスの弁明)の「本」に言葉に触れてみることだ。

私たちは、誰でも、宇宙に、1回限りしか生きない生きものである。

さて、90分のお話は、「死」について、「お金」について、「女」について、「酒」について、「宗教」について、「仕事」について、「自然」について、いろいろ語らせてもらった。
兼好さんと現代人、果たして、どちらがよりよく人生(私)を生きているだろうか?

みなさん、一生懸命ノオトを執って下さった。更に、懇談会では、質問責めであった。
(私)の声は、とどいたであろうか?

長時間、誠に、ご静聴ありがとうございました。
感謝、また、どこかで、お会いしましょう。

演題 : 「生涯現役で生きるために」 ~背広を脱ぐ前 脱いだ後~ 「徒然草」(吉田兼好)を読みながら
場所 : オークラ千葉ホテル
日時 : 平成22年12月3日(金) 15時00分~16時45分

【背広を脱ぐ前 (決断と実行と胆力)】
①人は、社会的な(私)を生きている。
寝る場所(家)があって、着るもの(衣)があって、食べるもの(食)があって、仕事があれば充分である。
生活の中心にはいつも(仕事)がある。会社で、組織で、(規則と法)のもとに、働いている。生きるために。仕事・仕事・仕事。
ビジョン(あるべき姿)があり、それを実現するために、働いている。人間と人間の間で。毎日、汗を流して。
(仕事とは何か?)

【背広を脱いだ後 (自由と覚悟と生きがい)】
仕事の(場)がなくなる。社会的な(私)が消える。いわば、椅子・肩書き・役割りが、突然無くなってしまう。
●誰も、生れてきたいと思って、生れてきた人はいない。ある歳、気がつくと(私)がいた。ニンゲンである。で、働いて、生きた。
●生老病死は、ニンゲン、誰も避けられない。

②素顔の、裸の(私)、ただの(私)を生きなければならない。
(何が変わった?大事なものとは何か?) 大問題である。
さて、あり余る時間と、自由を手に入れた。人は、どう、生きればいいのだろうか?
(人間とは何者か?)

【「徒然草」 吉田兼好 著】
①吉田兼好ってどういう人?
時代は、南北朝。(1283年~1353年?没)
本名 卜部兼好(うらべかねよし)。室町時代に、子孫が卜部から吉田に改名。(吉田神道)
吉田神社(京都)は、神道界の名門の家系。貴族出身。兄弟に、高僧・天台宗の大僧正(慈遍)がいる。
役人(六位の蔵人)をやめて、出家・世捨て人となる。(30歳頃?)
(市井の自由人)に。
歌に秀でていて、歌集「兼好法師家集」がある。旅を好み、西行を親い、東国(関東・鎌倉)の名士と交流。

②「徒然草」って、どんな本?
37歳~48歳頃、兼好が書いた随筆集。
「枕草子」(清少納言)、「方丈記」(鴨長明)と比較されるが、実は、日本初の「批評」の第一級の書物である。批評家誕生。
隠者となった兼好が、人知れず、書いたもので、(人間)をめぐる、さまざまなエピソードと批評に満ちている。
奇人、変人、珍人、通人、知者、あまたの人間が登場して、お金・友達・お酒・恋・死・四季・孤独・宗教・病気・読書とあらゆるテーマが、鋭い批評で語られている。
滑稽談あり、奇談あり、逸話あり、幅広く人間の世界を、眺望している。
もちろん、生老病死が中心で、(無常)が、最大のテーマである。
深い洞察力と、鋭い観察眼、エスプリの利いた批評とユーモアあふれる作品で、名文である。(声を出して読みたい)
●兼好の生前には、ほとんど、知られていないし、読まれてもいなかったのが、江戸時代に、再発掘されて、一大ブームとなり、「日本の論語」ともてはやされ、嫁入りの時には、親が、必ず、嫁にもたせたほどの人気だった。全243段のエピソードから成る。
●人間の文化、文明は、数百年で大きく進歩した。
しかし、人間そのものは、果たして、進歩しているのか?昔と少しもちがわないのか?
700年前の人、兼好の本を、現代人は、どのように、読むのだろうか?(長寿社会にはピッタリの本) 温故知新。

Category: 対談・講演
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