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• 金曜日, 10月 01st, 2021

宇宙の記憶を一番深く長く刻んている石に感応して 石の放つコトバを 聴き 読み 見てしまった 四人のニンゲンがいる 大津の穴太衆のように

あらゆる石のコトバを聴く「石っこ賢さん」と呼ばれた少年がいた 野へ 山へ 川原へと 歩きに歩いて 石を収集して 分析し 分類し 科学し 詩「永訣の朝」にまで昇華した宮沢賢治 法華経から相対性理論まで読み込んで 宗教と科学と文学が結婚した 『銀河鉄道の夜』 に至った 宇宙でも石を発見 石のコトバを書き続けた 他人に デクノボーと呼ばれながら ケンジの石はみかげ石

「私はひとつの石ころである」秋山駿の「生」の綱領である ある日 道端に転がっている石ころを拾ってきて 机の上に置いた 知的クーデターのはじまりの合図だった 一日 七日 十日 百日とデカルト風な石ころとの対話がはじまった 『内部の人間』 の発見と誕生
『舗石の思想』 は石ころのコトバの頂点 ある日義母が家を出た 秋山青年は 追いかけて行って 石ころを手渡した 自分の耳を切り落として 貧しい女に差し上げようとしたゴッホの心性と酷似 極楽トンボと呼ばれながら 石ころの「生」を生き抜いた

狂女の祖母と身も心も交感できる心性をもった少女 天草の石工の棟梁であった祖父が築いた石垣の石と 魂の交感ができた少女 ニンゲンの世界のどこにも 言葉をかわせる場所がなかった 石になろうとして身を投げた 苦と悲と怨しかない水俣病の患者たちに共感し 共鳴し 共振して 『苦海浄土』 に至った 石のコトバを ニンゲンの言葉に変換して 闘い抜いた巫女・石牟礼道子であった

化石少年と呼ばれた男がいる 一日中山を歩きまわって 化石ハンマーで 化石を割りに割って 水成岩の中心に巨大なウニの化石を発見 震撼された魂 中心へと歩く心性の誕生 夜と昼の彼方へ 異界へと歩く 淵を 縁を 際を 間を 境目を 裂け目を 物と言葉の 夢と現の 此岸と彼岸の 正気と狂気の境界線上を歩く どちらに転ぶかわからない危険でスリリングな歩行者 中世の二上山と古代のエジプトを共時的に歩いて 『オシリス 石ノ神』 に至る 吉増剛造のコトバ宇宙が出現 顕現したのは石のコトバ

四人に共通する心性は? 石と歩行と無私

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