Archive for ◊ 4月, 2017 ◊

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• 月曜日, 4月 17th, 2017

1.「戦争は女の顔をしていない」(岩波書店刊)スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著(三浦みどり訳)
2.「井筒俊彦全集」第12巻アラビア語入門(慶応義塾大学出版会刊)
3.「流」(講談社刊)東山彰良著
4.「淵上毛錢詩集」(石風社刊)前山光則編
5.「時間」(岩波現代文庫刊)堀田善衛著
6.「パウル・ツェラン詩文集」(白水社刊)飯吉光夫編・訳
7. 詩集「聖地サンディアゴへの道」(土曜美術社出版販売刊)富田和夫著
8.「武満徹・音楽創造への旅」(文藝春秋社刊)立花隆著
9.「我が詩的自伝」(講談社現代新書)吉増剛造著
10.「クレーの日記」(新潮社刊)南原実訳
11.「破船」(新潮文庫刊)吉村昭著
12.「星への旅」(新著文庫刊)吉村昭著
13.「関東大震災」(新潮文庫刊)吉村昭著
14.「戦艦武蔵」(新潮文庫刊)吉村昭著
15.「三陸海岸大津波」(文春文庫刊)吉村昭著
16. 詩集「怪物君」(みすず書房刊)吉増剛造著
17. GOZOノート②「航海日誌」(慶応義塾大学出版会刊)吉増剛造著
18. GOZOノート①「コジキの思想」(慶応義塾大学出版会刊)吉増剛造著
19. GOZOノート③「わたしは映画だ」(慶応義塾大学出版会刊)吉増剛造著
20.「心に刺青をするように」(藤原書房刊)吉増剛造著
21.「重力の虹」上・下(新潮社刊)トマス・ピンチョン著(佐藤良明訳)
22.「井筒俊彦全集」別巻(未発表原稿他)(慶應義塾大学出版会刊)
23.「真理の探求」(仏教と宇宙物理学者との対話)(玄冬社新書刊)佐々木閑・大栗博司著
24.「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」(青土社刊)森川すいめい著
25.「中論」上・中・下(第三文明社刊)龍樹著(三枝充恵訳)
26.「鉄格子のはめられた窓」(ルートヴィヒ二世の悲劇)(論創社刊)クラウス・マン著(森川俊夫訳)
27.「生き心地の良い町」(講談社刊)岡壇著
28.「在りし、在らまほしかり三島由紀夫」(平凡社刊)高橋睦郎著
29.「般若心経・金剛般若径」(岩波文庫刊)中村光・紀野一義訳注
30.「炸裂」(河出書房新社刊)閻連科イエン・クエンマー著
31. 詩集「真珠川Barroco」(思潮社刊)北原千代著

1.「戦争は女の顔をしていない」
トルーマンカポーティの『冷血』は、事件を追いながら、同時に(事実)を積み重ねて書くという、衝撃的な、ノンフィクション・ノベルの最高峰となった。この作品『戦争は女の顔をしていない』も、従軍女性記者が、戦争の中の、女たちを取材して、(事実)を書き記したものである。(ソ連の従軍女性たちの声を発掘)した稀有な作品。ノーベル賞受賞作家のデビュー作。ベラルーシ出身。 

2. 語学の天才、数十カ国語を話した、井筒俊彦のアラビア語入門。単なる語学の本ではなく、アラビア思想も語ってくれた。

3.「流」台湾出身。九州に棲む。直木賞受賞作品。
スリル満点の読みもの。日常生活の、細部を描く作家が多い現代に、大きな「物語」を語ることができる作家の出現であった。

4.「淵上毛錢詩集」
小さなコトバの中に、熊本の方言の中になんとも言えぬ、人間味があふれる詩集である。肉声が詩の中に響きわたる詩人である。

5.「時間」
『広場の孤独』や『方丈記私記』や『ゴヤ』で知られた、戦後派の作家である。『時間』は、中国人の視点から描かれた「南京事件」が主題である。解説は、作家辺見庸氏。「歴史と人間存在の本質を問うた戦後文学の金字塔」

6.「パウル・ツェラン詩文集」
「20世紀ドイツ最高の詩人。旧ルーマニア領、現ウクライナ共和国で、ユダヤ人の両親のもとに生まれる。ドイツ語を母語として育つ。」「言語」しか信ずるものがない、絶望の淵で、詩作を続けた。コトバがそのまま、モノとコトになっている。精神病を患って、セーヌ川に投身自殺。ニンゲンの、最後の拠りどころ、コトバを生きた人。

7.「聖地サンディアゴへの道」
語学学者による詩集である。温和な人柄がそのまま、ゆったりとした詩風をつくりだしている。

8.「武満徹・音楽創造への旅」
思想の人・立花隆が、こんなにも、音楽に精通しているとは、驚きであった。武満徹をライブで聴き、感動し、音楽を学び、分析し、ロングインタビューを試みた「本」である。武満徹も立花隆を信用して、徴に入り、細に入り、語りつくし、立花は、武満の音楽創造の秘密に迫り、終に、ニンゲン武満徹を、見事に浮かびあがらせている。

9.16.17.18.19.20
詩人のM氏と二人で、東京都近代美術館で催された「吉増剛造展」を観に行った。(聴きに行った)詩人の個展?いったい何があるのだろう?吉増独自の写真、記録ビデオ、絵のような、詩の文字、銅版画、吉本隆明・中上健次の原稿、(声)を集めたカセットテープ(数百本?)もう、これ以上観ると、聴くと、神経が破れる、と会場を後にした。50年前、吉増の「黄金」詩篇に感動して、憑かれたように、吉増剛造の世界を読んできた。「吃る人」「分裂している人」「閉じ込もる人」「叫ぶ人」現代の、唯一人の生きる(詩人)であろう。文学には、詩には、独自の、ニンゲン宇宙があると、証明してくれる稀有な詩人である。

10.「クレーの日記」
『ゴッホの手紙』は、長い間、私の枕頭の書であった。ヒトが生きるとはどういうことか?仕事とは何か?ニンゲンとは何か?そんな声が響いてくる。「クレーの日記」も、「ゴッホの手紙」に匹敵する「本」であった。あの絵画の背後に、こんな、コトバがあったのか、と、クレーを見直した。

11.12.13.14.15
市民の為の「読書会」を頼まれて、『破船』が、テキストとして選ばれた。これを機会に、吉村作品を読んでみた。いわゆる「純文学」から「戦記物」へと舵を切った、吉村作品、『三陸海岸大津波』は、3・11があった為か、非常に、魅力された作品であった。

21. 世界の深甚徴妙で超難解な小説といえば、
①ドストエフスキーの四大長編
②ジェームス・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』
③埴谷雄高の『死霊』
そこに、第四の作品が加わった。トマス・ピンチョンの大作、『重力の虹』である。「読解不能」であって「猥褻」とされる、2900枚の超問題作。佐藤良明が、翻訳に七年を要した。

22.「井筒俊彦全集」
最終巻。3~4年、井筒俊彦を読み込んできた。空海以来の、語学の天才であろう。思想は、日本を超えて、世界的である。感謝と!!

23.「真理の探求」
仏教学者と宇宙物理学者との対話である。(仏教)も、また、時代とともに、その受容と解釈が変わる。

24.27
私の故郷の徳島県、海部郡、海陽町が、二人の学者にとりあげられた。「海部町が日本で一番、自殺率が低い」という理由で。(私の故郷はお隣りの宍喰町ー合併)

25.「中論」
第二の仏陀と呼ばれる龍樹(ナーガルジュナ)の主著である。仏教学者中村元が、50年間『中論』の研究をしている。(『空の論理』)「空」と「縁起」と「中道」。仏教ー日本の八宗の祖である龍樹。その思想は、深甚微妙であって、一読、二読でわかるようなものではない。読破したよろこびが、今、私にある。

26.「鉄格子にはめられた窓」
トーマスマンの息子の小説である。偉大な父をもって、父と同じ仕事をする者の、困難と悲劇。(自殺)

28.「在りし、在らまほしかり三島由紀夫」
三島由紀夫に、詩を認められて、三島が自殺するまで、親交のあった、詩人による三島論である。学者、評論家には、わからない、生身の三島由紀夫が、語られていてとても、スリリングな本である。

29.「般若心経・金剛般若経」
日本人には、一番よく知られているお経、(一番短かい)「般若心経」いろいろな解釈がある。「空海」さんにも、「般若心経秘鍵」がある。

30.「炸裂」
ノーベル賞に、もっとも近いといわれている、中国人の作家の長編小説。骨太な文体で、奇怪な世界を出現させる。

31.「真珠川・Barroco」
十年ほど前、見知らぬひとから、一冊の詩集が贈られてきた。(『ローカル列車を待ちながら』)二十年も、詩を書くのを止めていたこと。夫の転勤でドイツで生活したこと。更に転勤で、徳島へ。(徳島)は私の故郷である。何かの縁だと思って、感想をお送りした。オルガンを弾いて、詩を書くひと。今年のH氏賞受賞者が「北原千代」さんだと、日経新聞で知った。第四詩集であった。おめでたいことである。(詩集については、私のホームページの書評欄に書かせてもらった)