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• 木曜日, 12月 04th, 2008


あとがきより

私も還暦を過ぎた。

長篇小説『風の貌』を、新文学の旗手として出版していただいたのが、25歳の時だから、眼のくらむような時間が流れていたことになる。

ある個人的な理由で、筆を断ち、長い間、文学から遠く離れて生活をしてきた。

靴底を減らして歩くセールスマンとして14年間、汗を流し、柄にもなく、会社を設立して、創業社長として22年間、働いてきた。全国を歩いて数万人の人に会った。幸運にも、会社は成長し、進化し、若い力も育ってきた。

会社の設立には、大きな決心が要った。

実は、もっとむずかしいのは、会社を続けること、成長・発展させることだった。(自立・共生・あんしん)というコンセプトを基にして、高いヴィジョンを掲げた。随分と胆力が要った。

そして、一番むずかしいのは、自分で創った会社を辞めることだった。断腸の思いだった。大変な覚悟が要った。(時が移り、人が変わるのは、自然の理だ。)

しかし、ものは考えようだ。自由に使える時間ができる。いつか来た道に戻って、本格的に、腰を据えて、執筆活動に全力投球をする。テーマも材料も、ノオトと頭の中にぎっしりとつまっている。作家として生きる。生涯現役だ。

人生80年時代である。昔、菊池寛が、小説は30歳を過ぎるまで書くなと言った。感性だけでも、小説は書けるが、生きて、人間を知り、思想を持ち、生活を知らないと、人の心を打つ作品ができる訳がないと言いたかったのだろうと思う。(当時は、人生50年)

新しいステージで活動するには、還暦でも決して遅くはあるまいと、勝手に、自分自身を鼓舞している。何しろ100歳以上が1万人を超えた世の中である。

さて、本書は、私の5冊目の本である。今までの本は、すべて、小説集だった。今回は、紀行文、エッセイ(ブログ)、講演、対談、小説、詩、書評と、頼まれるままに書いたり、話したりしたものをまとめてみた。まるで、1冊の雑誌である。入り口は、どこにでもある。高校生から高齢者まで、誰にでも読める(章)がある。働きながら、その度、発想一発とエネルギーで書いたものがほとんどた。しかしいつも、自分の心には、正直に耳を傾けて、書いてきた。好きな分野だけでも読んでいただきたい。出口も自由だから。是非、本の中を歩いてほしい。

私が仲間たちと、20代に出した文芸雑誌のタイトルが「歩行」、会社の事業の中心が「ウォーキング=歩行」。インターネットのブログが「言葉の歩行」、ライフワークの長篇小説のタイトルが「百年の歩行」。考えてみれば、私の人生を貫いているキーワードは「歩行」だ。(核)が歩くことである。正に、歩け、歩け、歩き続けろ!!である。

今回も、たくさんの人にお世話になった。対談・座談会で秋山駿さんに、装丁では、辛い体調を押して、力強い本の貌を作っていただいた秋山法子さん、図書新聞社長の井出彰さん、製作・校正の高橋和敏さん、深く感謝致します。

そして、長い間、封印してきた、ものを書くという行為に、作家として生きる私に、いいわと背中を押してくれた妻もと子にも感謝を。

私のライフワーク、長篇小説「百年の歩行」の完成にむけて、もう、歩みはじめている。ドストエフスキーを胸にかかえて。

2008年11月  著者

書籍について———————————————————————-

歩いて、笑って、考える」(株式会社図書新聞) 定価1,800円(+税)
12月10日発売 全国の書店にてお求め下さい

Category: 新刊
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