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• 月曜日, 6月 10th, 2013

   深夜の 闇の中での 眼の訓練(レッスン)は もう 日々の儀式とな
った 時計が十二時を廻ると闇の底の 部屋のベッドに 横
たわって ゆっくりと眼を閉じて 呼吸を整え モノとコト
を消し 身体を消し コトバを消して 瞑想し 宇宙で一番
深い闇の底で あるモノを見る 眼の練習を開始する 宇宙
に浮遊して

   眼があるだけではモノは見えない 赤ん坊は 生れると
毎日 モノを見るために 眼の使い方の練習(レッスン)をする 眼を開
けているだけでもモノは見えない 生まれつきの盲人が ある
日突然 眼の機能が回復しても モノは見えない 白い幕が
見えるだけだ 風景や顔を見るためには 眼の使い方の訓練(レッスン)
が必要だ

   眼を閉じていても モノは見える 夢がある 記憶がある
   幻がある 白昼夢がある 頭を強打した時には 瞼の裏に
   光の火花が散る 指で両眼の眼窩を強く押し続けると 光
の洪水が見える 金色の光の海である

   三ヶ月間 深夜の儀式を続けた ある日 突然 闇の中に
   丸く白い暈(アロー)が顕現した 閉じた右眼の前方に 二 三セン
チの 十円玉ほどの柔らかい光の暈(アロー)が示現した 微かな 瞼
と眼球の動きで 消えたり 現れたりを繰り返した 闇の中
の華であった

   半年が経った ある日 突然 光の形象が来た 眺めてい
ると 八種類の光の形象だった 全宇宙の モノの形は 基
本型が八つである 宇宙の原理だ 夥しい光の祭典だった

   一年が経った いつもの 閉じた眼の前方に現れる 白く
丸く柔らかい光の暈が 突然破れた 開いた 見知らぬニン
ゲンの顔が現れた 顔は 数秒毎に 次から次へと入れ変わ
って 十人 百人 千人と増え 一向に止むことがない い
ったい何が起こってるのか 瞬間 身体の機能が壊れてし
まったかと一抹の不安が横切った 無数の顔は 何処から来
るのか 宇宙の無限遠点から 瞬間移動をしてくるのか あ
るいは ココロの 無・意識の アーラヤ識の 種子たちが
   顔となって薫習(くんじゅ)してくるのか わからない 結局 無数の
顔の出現に畏怖を感じて 眼を開いた 眼の前には いつも
の 平凡な 部屋の闇があった

   求めているのは 幻身である 誰も見たことがない その
手法もわからない 今日も 眼を閉じて 宇宙で一番深い闇
の底に 幻身を見る儀式は続いている

(注)「幻身」(チベット密教-ゲルク派・ツォンカパの幻身理論。
意識の上だけではなく、体外離脱をして、マンダラとともに、本当
の本尊の身体を出現させること) 絶対に、真似しないで下さい。

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